アドバルーンとシャングリラ

アドバルーン_1通勤途中、ふと空を見上げるとアドバルーンが浮かんでいた。
何年振りだろう、アドバルーンを見るなんて…。

屋上遊園地

私が御幼少の砌、四国のとある地方都市のそのまたはずれの郊外に住んでいた。
年に何度かは親に連れられて街に買い物に出ていたと思う。

その時の楽しみと言えばデパートであった。

デパートの屋上には遊園地があり、今では考えられないであろうがそこには観覧車があり(これは今でもあるか)、メリーゴーランドがあり、はては一寸規模は小さいながらジェットコースターの様なものまであったのだ。

私は小遣いをもらい、コインを入れるとガタガタと前後に揺れるだけの小さな車に乗り、10円玉を入れるとそれがそのままゲームの駒となり穴に落とさない様にその10円玉を弾いていくという単純なコインゲームを愉しみ、透明なドームの中に噴水のごとく吹き出す無果汁のオレンジジュースを紙コップに受け美味しく飲んだ事を記憶している。

そしてお昼は遊園地の下のデパート最上階にあたる大食堂に行き、大好きなラーメンを食べるのだ。今とは違い当時のデパートの大食堂で食事をするという事はステータスであった。他所行きの服を着て出かける場所であったのだ。

両親は「なんでこんな所に来てまでラーメンを食べるのだ。もっと美味しい物が他に有るだろう」と言っていたが、その当時の私にとってラーメンこそが正義であった。ラーメンの前ではハンバーグもエビフライも色あせていた。イタリアン・スパゲッティの鮮やかな赤もカレーライスの食欲をそそる香りも太刀打できない、幼い私にとって何者にも代えがたい悪魔の様な魅力を「ラーメン」と言う四文字は放っていたのだ。

そんな地上の楽園、デパートの空には常にアドバルーンがあった。

郊外の自宅からデパートへ向かう途中、当時は高層ビルなんて物は無く遠くでも車窓からアドバルーンが良く見えていた。

あの色鮮やかなアドバルーンの下には原色の楽しい遊具と美味しいラーメンが待っているのだ。

幼稚園児の頃であったろうか。いや、小学生の低学年であったかもしれない。
いや、もしかしたら、大人になってから刷り込まれたセピア色の偽りの記憶かもしれない。

本当はジェットコースターもメリーゴーランドも無く、そこには昨今のゲームコーナーに毛の生えた様な屋上があっただけかも知れない。大食堂だって気軽に行けるファーストフード・チェーン程度のお気楽な店だったのかも知れない。

でも、アドバルーンは確かにあったのだ。あの空にあったのだ。空高く舞い、ここにシャングリラがあると地上の人間共に知らしめていたのだ。

そして今…

アドバルーン_2

今でもアドバルーンの下には楽園があるのだろうか?
子供達のはてしない夢がぶら下がっているのだろうか?

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そこには、あなたと私の夢が……あった。

アドバルーン_3

you me town(ゆめタウン)、本日、2018年12月01日オープンらしいです。

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